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このブログは、9割以上が妄想で構成されています。アニメ・ゲームへの偏愛が主な成分です。
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更新しようとして、3回拒否られました。(´・ω・`)ショボーン.
えぇっと、何を書いてたっけ?つーか、この時間に拒否んなよう。

それはさておき。
なんだか妙に好評の「ライ猫」第2弾です。本来はここまでで1話の予定でした。

この話のライは猫なので、LC本編よりもルルに近づきやすいようです(笑)
大のあまあま好きの私が書いたにしては、ちょっぴりシリアス風になってしまいましたが、まあ、基本的にLC本編沿いなので……多少シリアスが入ります。
問題は、どのルート沿いにするかをまだ全く考えていない点です。orz

うーん……どのルートにしよう。
ルルライなので、基本的にはルルEDなのは決定事項なのですが……
ギアス編か、騎士団編か、学園編か、青月編。
ライの過去をあんまり真面目に考えていないので、青月でもいいなあ(笑)

 


+ + + + + + + + + +








ライは猫である。
本人――いや、本猫にもその自覚はあるし、アイデンティティーのひとつであることは明白だ。
だが、ただの猫ではないことも自覚していた。

ルルーシュの部屋の一角。籐の籠に端切れを詰め込んだ簡易の猫ベッドに横たわっていたライは、ふと目を覚ました。
半日ほど前までは自分の意思どおりに動かず、まるで油の切れたロボットのようだった身体も、しっかりとした休息と栄養のおかげか随分とマシになった。
ブリタニア軍施設から逃げ出して宛もなく彷徨っていたライにとって、ぐっすりと眠ることができる環境など、本当に久しぶりのことだった。

ライはふるりと身体を震わせて立ち上がる。
星明りしかない暗闇の中にも動じることはない。何しろ、猫なので。
時計を見上げれば午前1時を回ったところで、あたりは静寂だけが支配していた。にもかかわらず、ライの拾い主であり、本来ならばライのベッドの横――人間用ベッドで眠っているはずの少年の姿は見えない。

ライは思わず首をかしげた。
ライが眠る時にはいたのだが……すっかり眠り込んでしまい、彼が出て行く気配にも気づかなかったらしい。
ライはすっかり安心しきってしまっている自分に驚いた。「ここにいてもいい」と言われるのなど、初めてのことだったから、ついつい気が抜けたのだろう。
今までそんなことはなかったので、どうしたらいいのかすら分からなかった。

信じていいのか、とか。
疑うべきなのか、とか。
そんな考えすら頭の中に浮かぶことなく、ただ、どうして拾い主の少年――確か、名前はルルーシュといったはず――がいないのか、ということだけが気になる。
心の奥のほうがざわざわとして、妙に気持ち悪い。

ライは不思議がる理性をおいて、とりあえず本能に従うことにした。
壁の一部を蹴り、華麗に二段跳躍をして開閉ボタンにタッチする。シュンと小さな音がしてドアが開いた。
猫らしく音もなく着地すると、ライは悠然と夜の闇の中へと歩いていった。

どこからか入り込んでくる夜風は冷たく、万全とは言えぬ体調のライには少しばかりつらい。それでもライは戻ることをよしとはしない。決めたらやり遂げるがモットーだ。

クンと鼻を動かせば、かすかにルルーシュという少年の匂いがした。
猫の嗅覚は犬には劣るものの、人間の数十万倍ほどに敏感だ。夜のひんやりとした空気の中に探し人の気配を見つけて、ライはまっすぐにそちらに向かって歩いていった。

回りは見たこともない景色ばかりだ。
大きな窓からは木々の梢がゆれるのが見え、その間を縫うように小さな星が瞬いている。
いままでライがいた場所といえば、窓も小さく、壁はどこも真っ白でひどく無機質だった。窓からのぞくのは四角い空と同じような建物ばかりで、自然の「し」の字もない環境だったと思い返す。
それを格別に嫌だと思ったことはなかったが、こうして外に出てみると、その景色すらもストレスだったのだと気付いた。
不自由は確かに苦痛だったのだけれど、そんなことにまで負担になっているとはライ自身気付いていなかった。

不意に、何か物足りないような気分になり、ライは周りを見回した。
何の気配もそこにはなく、夜の闇が静かに横たわるばかりだ。それが無性に悲しいような苦しいような、心もとない気持ちになって、ライはとっさに走り出した。

匂いを必死で追いながら走っていくと、唐突に何かの気配がした。
急ブレーキをかけて、臨戦態勢をとる。重心を低くし、後ろ足に力を込め……

「ほう、珍しいな」

飛び掛るまでもなく、気配のほうからライに近づいてきた。
長く美しいライトグリーンの髪、瞳は満月のような金。限りなくヒトに近く、けれども決してヒトではあり得ない気配をまとった少女が、ライに冷ややかな笑みを浮かべた。
ライは反射的に攻撃しそうになった手を止めて、思わず少女に魅入ってしまった。綺麗だと思う。けれど同時に、どこか哀しく儚くて、恐ろしいと思わせる。そんな不思議な少女だった。

「ずいぶんと猫のフリがうまい」

ライが少女に敵意なしと判断し、行儀よく座りなおすと同時に、そんな意に沿わないことを言われて憮然とする。ライは猫なのであって、「猫の"フリ"がうまい」と言われても困るのだ。
ライが苛立ったのが分かったのか、少女は楽しそうに喉を震わせて笑う。

「フリといわれても仕方がないだろう?お前は猫ではあり得ないのだから」
『……自分では、猫だと思っているのだが?』

ライは仕方がないとため息をついてから、そう反論した。
――ヒトの言葉で。

少女はひどく満足げに口の端を引き上げた。そして「ほら、やっぱり」と呟く。
ライは不満そうに耳を動かした。

『どこからどう見ても猫だろう?』
「いまは、な」
『……君はずいぶんと詳しそうだな。何者なんだ?』

ライはまっすぐに金の瞳を見上げて尋ねた。目を眇め、深い青から目を逸らしたのは少女のほうだ。
どこか怯えているようにも見えるしぐさに、ライは驚いた。先ほどまで身にまとっていた傲慢さが溶けるように消えてしまっている。

思えば、自己紹介もしていないことにライは気付いた。
事情通のようだが、仔猫が平然とヒトの言葉を話せば、それは怯えもするだろう。
ライはいささか慌てて口を開いた。

『えっと、僕はライという。今は猫の姿だし、自分では猫だと思っているけれど、普通の猫とはすこし違うんだ。でも、別にそれだけで、何か害があるわけではないから安心してほしい』

少女は早口に言い募った仔猫を見て、きょとんとした表情をした。何を言われたか分からないという風情に、ライはさらに説明を重ねようとする。が、その前に少女が声を立てて笑った。

「別にお前を恐れる理由はない」
『……そう、か?』
「ああ、いらぬ気遣いだったな。ライ」

ひとしきり笑ってから少女は小さな仔猫の身体に、指先でそっと触れた。

「私の名はC.C.。私を説明するのはそれだけの記号だ。他にはない」
『……君が何者かという説明もなしか?』
「今はまだ。けれどいつか、気が向いたら教えてやるよ」

C.C.はそう言いながら艶やかに笑ってみせる。
それからふと、表情を改めてライの青い瞳をじっと見つめた。

「ひとつだけ、ヒントをやろう。私もお前と同じさ」
『?』

ライが首をかしげたのにC.C.は楽しそうに笑う。

「お前と同じ。どこか正しい位置に属すことは出来ない……化け物だよ」

分かるだろう?と続けられた言葉に、ライは目を伏せた。
分かる。分かってしまう。どうしようもなく。

ライは猫だ。
猫だと、自分では思っている。
でも、猫は通常、人の言葉を解することはなく、人の言葉をしゃべったりもしない。
そして――自分の意志で、姿を変えられることもない。

ライには過去の記憶がない。
気がつけば、ブリタニア軍の施設内で透明な牢にとらわれていた。
覚えていたのは「ライ」という名と、猫であるという事実。そして、どうすればヒトの姿になれるのかという本能。
それが「普通」だと思っていた。
だが、繰り返される実験と強制的に植え付けられる知識と劣等感に、自身が異常であることを知った。

――でも、自分は自分以外にはなれないから。

『そうかもしれない。でも、化け物ではないと思う。僕も、君も』

呟いた言葉に、C.C.はちらりと笑ったようだった。






C.C.が別れ際にちらりと視線を送った先に、ライの拾い主の匂いがした。
そして気づく。きっとC.C.もあの少年に拾われたのだ。

ライは振り返りもしないC.C.の後ろ姿をしばらく見送ってから、再び歩き出した。
夜の闇が先ほどよりも深まっているような気がする。闇の中でもよく見える猫の眼でも、心の闇までは見通せない。
冷たい風が心まで冷やしてしまうようで、ライは次第に足を早めていた。

ライが足を止めたのは、ひっそりとした部屋の前だった。細く開いているドアから光が漏れていた。
中に人の気配――ルルーシュがいる。ライには直感的にそれが分かった。

それでも入るのに少し躊躇したのは、微かにモーター音とタイプ音がしたからだ。
それは、研究所で聞いていた物に酷似している。勿論、違う。違うのだと分かっているのだけれど、それでも嫌だと思う気持ちを止めることは出来ないのだ。

それでも、ライは意を決して部屋に入った。小さな身体はわずかな隙間でもするりと入ることが出来た。
中は薄暗く、ルルーシュはパソコンのモニタとデスクスタンドの明かりだけで作業をしている。
何をしているのかは分からなかったが、その背中から伝わってくるのは強い意志と刺すような鋭さ、そして切なくなるほどの冷たさだった。

それは、まるで孤独を体現したようにライには思えた。
どこかで……そう、どこかで見たことがあるような気がした。
淋しくて悲しくて、でも怒りだけは消えなくて――藻掻いていた。ずっと、ずっと、藻掻いていた。

「にぅ」

心臓が捕まれたような気がして、ライはとっさに声を出した。
意識せずに零れた声は情けないばかりの小さな鳴き声になったが、それでもルルーシュはぴくりと肩を揺らし振り返る。

「ライ?お前……こんな所まで来たのか?ドアはどうした?」

椅子を回して振り向いたルルーシュが、微かに笑みを浮かべてライに手を伸べる。
ライは勢いをつけてルルーシュの膝まで飛び上がった。うわ、と声を上げたルルーシュが、それでも勢い余って落ちないように、ライの身体をそっと抑えた。

「ずいぶん元気になったな」

微苦笑を浮かべてルルーシュがライの背を撫でた。
その指先は優しくて暖かくて、ライはほんの少し泣きたいような気分になる。涙を誤魔化すために、ライはルルーシュの膝の上で小さく丸まった。

「にゃぅ」
「なんだ?淋しかったのか?」

そうかも知れない。
でも、少し違うような気がする。

撫でられる度に、身体が暖かくなる。
こんな事は初めてだ。
少なくともあの研究所にいたときは、触れられる度に身体は冷たく硬くなっていった。
――まるで、先ほどまでのルルーシュの背中のように。
だから。

ライはそっと目を閉じた。退くつもりはないと、態度で示す。
ルルーシュは小さく歎息したが、ライを降ろすこともなくそのまま背を撫でてくれた。

手放したくないと思ってしまうほどのぬくもりに包まれながら、ライは思う。
――だから、せめて。この暖められた自分のぬくもりが、少しでも彼に還ればいい。





 

猫のいる生活01
(膝の上のぬくもりが、どれだけ嬉しかったか。意識したくはなかった)

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