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このブログは、9割以上が妄想で構成されています。アニメ・ゲームへの偏愛が主な成分です。
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新しいMPCからUPしようとして、なかなかうまくいきません。
もうやだ……orz

何を書いていたかも忘れてしまいました。
えぇっと、そうそう。題名をつけれないとか言う話を書いていたはずです。苦手なんです。
誰かにつけてもらえないかなあ。

というわけで、小噺本文始まります
拙い作品ですが、少しでも楽しんでいただけたらいいなあ。

+ + + + + + + + + +







ピンと張り詰めた空気に、ライは目を見開いた。
騒がしいといってもいいほど声と音があふれているのに、その場所には確かに緊張感があった。
木の板張りの床はぴかぴかに磨かれていて、うっすらと自分の足元が写っている。

靴を脱いで上がってくれという言葉に従って、ライは恐る恐る靴を脱いだ。どこかにはいるのに靴を脱がなければならない文化には、まだ少し慣れていない。
一方隣にいるゼロは慣れているようで、何の躊躇もなく靴を脱いで優雅な動作でそれを揃えた。ライは見よう見まねでゼロに倣う。

簡易な引き戸を開けると、そこには奇妙な服を着た男たちが汗を流していた。
くるぶし近くまで届いているスカートのような履物。上は以前書籍で見たことのある「キモノ」のような物だ。全員が素足で、模造品の剣のようなものを持っていた。
一部の人は頭全体を覆う仮面のようなものをつけている。

「奇妙な格好だな」などと思いながら、ゼロに続いて室内に入る。するといっせいに視線が集まった。
ゼロの隣にいることが多くなった最近では人の視線にもなれてきたが、それでも多少たじろいでしまう。もっとも、ほとんど表情は出ないが。

奥のほうで何人かに声をかけていた藤堂がこちらに気づいて近づいてきた。
こちらに視線を向けてきた人々が、いっせいに頭を下げる。

「ようこそ、ゼロ」
「ああ。盛況だな。使い心地はどうだ?」
「ありがたい。精神面でも体力面でも、こういったものの方が私たちには合うらしい」

そう言ってから藤堂は振り向いて周りの人々に、訓練を続けるように指示を出す。
指示に従い再びあちらこちらから声が上がりはじめた。

ライは首を傾げる。
ゼロには新しい訓練施設としか聞いていなかったのだが、どうやら日本文化に深く関わっている施設らしい。
すべて木造の建物自体珍しいし、建物内とはいえ裸足ばかりなのも気になる。
建物の奥には祭壇のようなものがあり、建物に出入りする人々はそこに一礼して行くのだ。
――宗教的なものは感じないが、もしかしたら日本における宗教というものはそういうものなのだろうか?

ライがそんなことを考えていると、すぐ隣でゼロが苦笑した。どうやら物珍しげに眺めているのを見られたらしい。
些か恥ずかしくなり、早口に聞いてみた。

「ここは一体?」
「ああ、そうか。君は知らないのも無理もない」

ゼロに代わって藤堂が深く頷いて答えた。
ピンの背筋の伸びた藤堂は、ブリタニア人を見慣れてるライから見ると決して背が高い方はないのだが、それでもその存在感でずいぶんと大きいような印象を受ける。
「奇跡の藤堂」と呼ばれ、部下に慕われる姿を見ていると、確かに懐深く、人間的に「大きい」人なのだろうとライは思っていた。
ゼロとはまた違うカリスマだ。

対ブリタニアのレジスタンス集団としては最大級の規模を誇る「黒の騎士団」のカリスマ二人に挟まれたライは、その二人に劣らない統率力と魅力でもって、今やゼロの片腕である作戦補佐官の地位にあった。

「ここは『道場』と呼ばれる施設だ」

ゼロがライに説明する。
ライには過去の記憶がない。自分に関する知識になさに起因しているのか、基本的に好奇心旺盛だ。
知らないことがあれば、調べてみようと思うのが苦ではない性格らしい。

「行われているのは『剣道』と呼ばれる競技で、日本の剣術だな」
「ケンドウ……フェンシングのようなものか?」
「剣を使っていて、一定のルールの上で行われる競技という面ではそうだな」
「剣道は剣の技術は勿論だが、精神面も成長させなければならない。日本文化において『道』とつくものは、精神面の成長を重視するものなのだよ」

ライは藤堂の説明に、興味深そうに耳を傾けた。
その様子を見て、ゼロは仮面の中で思わず微笑む。

もともとライは日本文化に馴染みやすい。
記憶がないせいか偏見がほとんどない。また、血液検査の結果、日本人とブリタニア人のハーフだと分かってからは積極的に日本について学ぼうとする姿勢が見えるのだ。
さらに体を動かすのが好きなようだから、絶対にこの剣道道場を気に入るだろうとゼロは踏んでいた。
その予想はあたったようで、一通りのルール説明を聞いたライは目を輝かせながら練習試合を見ていた。

ゼロ自身はそれほど剣道に興味はない。
スザクが幼い頃からやっていた関係で、何度か目にすることはあった。鋭い動きは美しいと思う。だが、やりたいとは思わなかったし、それほど関わろうとも思わなかった。

この道場も、藤堂を中心に上がった要望があったからこそ作ったものだ。
KMFによる戦闘も体力を使う。そして、何よりも戦闘センスが必要だ。
剣道は精神面で「戦い」への根本的な恐怖を和らげ、体力をつけることができ、戦闘センスも養われる。そして何より日本人を中心に構成されている「黒の騎士団」において、日本文化を取り入れるというのは結束力を高めるためにも必要不可欠なのだ。

ゼロ自身は完全なる道具として作らせた道場だが、それでもライが楽しそうにしているのが嬉しかった。
最近では表情が増えてきたこの正体不明の記憶喪失者を、ゼロは自分でも驚くほどに気に入っているのだ。
黒の騎士団の「駒」としてではない。
ただの学生であっても、ライの存在はゼロ――ルルーシュにとって大切なものになっていた。

そのライが興味を持ち、楽しんでいるという事実はゼロを喜ばせるのだ。

ゼロがひとり満足している隣で、藤堂による剣道講座はまだ続いている。
幼かった頃のスザクに教えていただけあって、藤堂の語り口はとても分かりやすい。普段はそれほど話すイメージがないのだが、要点をまとめた話し方は傍で聞いていても十二分なものだった。
武道の精神についてを簡潔に話した後には、剣道の所作についても話す。

藤藤堂が竹刀を持ち、持ち方や基本的な動きを実演してみせる。
真剣に聞き、なおかつ1を教えれは10を知るほどの吸収力を持つライに教えるのは、藤堂も楽しいのだろう。
次第に教える言動にも熱が入る。

「あとは残心だな」
「ザンシン?」

一通りの動きを説明した後、藤堂が呟いた言葉にライは首を傾げる。
馴染みのない響きにライは首を傾げる。

「打破した後であっても反撃が来るかもしれない。決して気を抜かず、ただちに反応できるようにせよ、という教えだ」
「なるほど。確かに、こちらが有効打だと思い込んでいても相手がうまくかわしていることもあり得ますからね」

藤堂が深々と頷く。ライは感心したように小さくため息をついた。

「素晴らしいですね。ひとつひとつの形は洗練されて、無駄がない。もちろん実戦向きではない部分もありますが……」
「競技として定められたのは100年ほど前のことだからね。それから――7年前までは日本は比較的平和だった。刀や剣を実戦に使うことはほとんどなかっただろうからね」

ライが不思議そうな顔をした。
その表情に、ゼロは首を傾げる。

「どうかしたのか?ライ」
「え?いや……どうしてだろう?剣を実戦で使わないということに、変な違和感があったんだ。でも――当然、のことだろう?なんでそんなことを思ったんだろう、と」

ライは自分の直感を心底不思議そうに語った。
ライ自身に分からないのだから、ゼロにも藤堂にももちろん分からない。3人はそれぞれに首を傾げることになった。

しかし、考えていも答えが出るはずもない。
藤堂は気を取り直して、ライに声をかけた。

「どうだい?ライ君。君もやってみるかい?」
「いいんですか?」
「もちろん」

さすがに胴着は用意していないので、ライは上着を脱ぎ動きやすい格好になる。
胴着姿ばかりの中に、洋服のライが混ざると奇妙に浮き上がる。いや、服は見慣れた黒の騎士団の制服であるから、実はそれほど違和感はないのだ。
ただ、ライという存在感が道場の中で際立って見えるのだ。

ライは竹刀の重みを確かめるように、数度持ち上げては下ろすを繰り返してから、藤堂から教えられたとおりに立ち礼からはじめる。
正眼の構えは、竹刀の先がぴたりと止まった。
その様子を見て、数人がほうっと感嘆する。教本に載っていてもおかしくないほどに美しく完璧な立ち姿だった。

続いて上段、下段など、藤堂の指示に従い構えのみを練習する。
一度見ただけのはずなのに、藤堂の姿を完全に模写したライは言われるままに正しい構えをする。

一通りに構えを復習すると、藤堂が満足そうに頷いた。

「素振りをしてみよう。先ほど見せた通りだが、できるかい?」
「できると思います」

ライが頷くと、ではと指示をだす。
上下素振り。
竹刀を振りかぶり、右足を出す。そのまま真っ直ぐ振り下ろし、左足をひきつける。もう一度振りかぶると、左足を出し、振り下ろすと右足をひきつける。
リズミカルに同じ動作を繰り返す。
竹刀が風を切る音も、素足が木板を踏む音も優雅に聞こえる。安定した動きは鋭いけれど、どこか優美さを持っていた。

ゼロは感心した。
まるで何かの儀式でも見ているようだ。ダンスというには鋭い動きだから、何か宗教的な儀礼だといわれたほうが納得がいく。
まるで武術のようには見えない。
剣の達人は「蝶のように舞い、雷撃に鋭い」ものだと聞いてはいるが、ライの素振りはその言葉を思い出させるのに十分だった。

その他にも斜め素振りや跳躍素振りなど、一通りの素振り練習を済ますと、さすがのライも多少息が上がっていた。
白い肌は淡く色づき、うっすらと汗をかいている。銀の髪が肌に張り付き、前髪を鬱陶しそうにかき上げる仕草に周りの空気の温度が変わったような気さえした。

――マズイ。
ゼロが思い、止めようとしたのと、朝比奈がにこにこと提案したのはほぼ同時だった。

「今度は試合もしてみないかい?」
「試合、ですか?」

ライは戸惑ったようだった。
それもそのはずだろう。今日はじめて剣道を知り、竹刀を持ったのだ。それが急に試合といわれても困る。初心者同士ならまだしも、朝比奈は明らかに自分が相手を務めると言外に告げているのだ。
とてもじゃないが、四聖剣のひとりの相手ができるとは思えない。

ライは思ったままに朝比奈に伝えると、「またまた」と笑われてしまう。

「謙遜は日本人の文化だよ、ライ君」
「いえ、謙遜とかではなく……」
「しかし、君の身体のさばき方は武術をかなり嗜んでいるように見えるが?」

卜部までもが楽しそうに声をかけてくる。その目は「ほらちょっと戦ってみろ」と言っているようだ。
ライはひくりと口元をひきつらせて、一歩さがった。
が、それは一瞬遅かった。

前方右側――朝比奈が手にした竹刀で鋭い突きを放つ。
ライはとっさに手にした竹刀でその太刀を薙ごうと思った。身体が思考に反応するより早く動く。ぴくりと腕が動き、右足が前に出ようとした。
が、ライはそのすべての体の動きを封じた。
なにもせず、ただ朝比奈の放つ突きの切っ先を見つめる。

ぴたりと、ライの喉元で竹刀が止まった。
あとわずか動けば――それこそ迎え撃とうと前掲姿勢を取ろうものなら、確実に当たっていた。
けれど、全く動かなかったライの肌に竹刀は触れることなく止まっている。

「――お見事」

朝比奈が楽しそうに言い放ち、竹刀を下げる。
ライは疲れたように笑っただけだった。

後方左側には卜部が下段の構えを取っている。一歩でも下がろうものならば、打たれていただろう。

「お前たち、いい加減にしないか」

藤堂の鶴の一声で、道場は奇妙な緊迫感から解放される。
ゼロはため息をついて、ライを呼び寄せた。ライは手近にいた生徒に竹刀を預け、足早にゼロの元に戻ってくる。

運動のせいだけでなく疲れて切った様子で、ゼロは仮面の下で苦笑した。
もともとこうなることは予想済みであったから、それほど驚きはない。強いて言うなら、予想以上にライが武術に秀でていることが分かったことが、予想外と言えば予想外であった。
ゼロは用意しておいたタオルをライに投げ渡した。すんなりとキャッチしたライは、照れくさそうに礼を言う。

「ありがとう、ゼロ。それから、時間をとらせてしまってすまない」
「予定時間内だ。気にする必要はない」

ささっと汗を拭くライをゼロは横目に見る。
些か乱暴なしぐさで髪ごと汗をぬぐうのに、少しばかり眉をしかめる。綺麗な髪なのに、もったいない。

「楽しかったか?」
「え?ああ――思いの外、身体を動かすのは好きらしい」

自分の嗜好までも忘却の彼方に置いてきているらしく、ライは時々自分が何を好きで何を嫌いなのか知らないことがある。
最近彼が気づいた自分の嗜好は「ピザが嫌い」である。

一般的な国際状況などの一般常識は覚えているくせに、食べ物の名前や簡単な遊びのことなどは一切覚えていない。
多分彼がほんとうに些細なことが分からないのは、そのせいかもしれない。

「お前は本当に知識に偏りがあるな」
「……ああ、そうだな。でも、こういう発見は新鮮で嬉しいよ」

ライがにこりと笑った。
彼の無表情は決して冷たいわけではない。凪いだ水面のような静かで優しげなものだから、彼の顔を見れば心が安らぐ。
けれど、そのライがにこりと笑うと、空気が和らぐ。

「これからも様々なことを体験すればいい」
「え?」
「そうすれば、お前は多くの自分を発見できるだろう。それはきっと財産になる」

大きく目を見開いたライは、次の瞬間破顔した。

「ありがとう、ゼロ」

 





剣の舞を (踊っていたのかも知れない。僕は)


********************


何ってわけでなく。ライに剣道をして貰いたかっただけです。(笑)
R2でスザクが胴着で出てきたときにトキメキまして!
本当は胴着も着てほしかったのですが……着替える間があると、なんとなく話の展開的に妙な気がして、黒の騎士団制服(上着脱ぎ状態)にいたしました。
――あの制服って脱いだらYシャツみたいな感じだと思って書いたんですけど、本当のところはどうなんでしょう?

何やかやと書いておりますが、私はまったく剣道をしたことがありません。
友達がやっていましたが、弱小部だったので特にこれといった試合があったわけでなく練習も数回見たことがある程度。
なので、剣道の説明部分はかなり適当です。
経験者の方、いらっしゃいましたら見逃してください!

 

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