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このブログは、9割以上が妄想で構成されています。アニメ・ゲームへの偏愛が主な成分です。
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恋したくなるお題」様より、お題を拝借して小噺を書いてみました。
可愛いお題ばかりで目移りしてしまいます!

設定としては、学園編に分岐する直前と言った感じでしょうか?
書いているときは「ルル→ライだ!」と思っていたのですが……なんか、消化不良な感じです。
せっかくお題を借りてきたのに!とほほ。

今週中くらいに、猫ライを書き上げられるといいのですが……
職場から仔猫の育成本を借りてきて猛勉強中です(笑)
猫ライはアビシニアンをイメージしているのですが……個人的には、ラグドールとかマンチカンとかが好きです。あと、ソマリも好き。
――もっとも、毛色が銀で目が青なんて特殊な仔はいないんですけどね。
どこかにそんな種類の猫はいないものなんでしょうか?いたら愛情たっぷりに飼うのに。

web拍手に今回の話の後日談をアップしてあります。
よろしければ、拍手してやってください。

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あ、と思ったときには既に遅かった。
ライの腕に引っかかった書類はバサバサと音を立てて散らばる。10㎝ほど積み上げられていたファイルやプリントが床に崩れ落ちた。
日付順、内容項目別になっていた書類も全てぐちゃぐちゃになってしまう。

ライは一瞬固まって、慌ててしゃがみ込んだ。
「すまない」と謝りながら、書類を拾い集める。一枚一枚、丁寧に順番を確認しながら並べていく手は早く上に正確だ。
だが、その様子を見ていたルルーシュは小さくため息を漏らした。

今日は一日中こんな具合なのだ。いつもならやらないようなミスを連発する。
普段のライであれば書類を落すようなこともなかっただろう。いや、一度くらいあるかも知れないが、まさか10回近く同じ事をするとは思えない。しかも、この1時間弱の間に。
会計計算を任せれば、簡単な加減算ができていないだけではなく、項目ごと間違えて訳の分からないデータとなったうえに、操作ミスでデータごと消してしまった。
バックアップが取ってあったので事なきを得たのだが、ライは余程ショックだったらしく真っ青になっていた。

「大丈夫か?」

ルルーシュが尋ねれば、ライはこくりと一つ頷いた。
だが、やはり顔色が悪い。普段から血色の良い顔色をしているとは言えないが、それにしても白すぎる。

一緒に書類を拾っていた手を止めて、ルルーシュは思わずライに手を伸ばしていた。だが、その手を緩やかに避けて、ライは「大丈夫だから」と繰り返す。
白い顔に浮かんだのは、微笑みとも言い難いほどに淡い笑み。ルルーシュは柳眉を顰めたが、ライはそんな苛立ちにも似た心配など歯牙にもかけていないようだった。仕事を続けようと、再び端末の前に座る。

いや、正確には仕事を続けたいのだ。ライにとっては「作業」は「逃避」と同意だった。
だから、ルルーシュが生徒会の仕事を溜めて、会長に呼び出されたときに「手伝うよ」と申し出たのだ。勿論、毎夜出かけて疲れているルルーシュが心配だったという側面もある。だが、それすらも言い訳でしかないようにライには思えた。

――自分勝手だな。
ライは自重の笑みを浮かべながら、ディスプレイに浮かぶ数字を眺めた。

記憶がないことをいいことに、優しい学園のみんなに縋っている。
ある程度の常識や知識はあるのだから、放り出されても文句は言えない立場なのだ。
しかも、過去分からなければIDもない。これほど怪しい人間も居ないだろう。もし自分がミレイの立場ならば、すぐにこんな不審人物は学園外に追い出している。
それなのに、学園に留めてもらっているだけではなく行動の自由まであたら得られている今の状態が、どれほど恵まれているか。
記憶を探すための行動が許され、学園内も租界も好きなように移動できる。

自分の記憶を補うように新たな知識を仕入れる度に、ライは泣きたくなった。
これほど良くして貰っているのに、ライにはこの優しい人たちに報いる方法が分からなかったのだ。

だから、せめて手伝いが出来ればと思っていたのに。

その「手伝い」すら自分は利用している。その現状に、ライは心から自分を嫌悪した。
そうせずにいられなかった自分の弱さが、ライには疎ましかった。

拾い集めた書類から必要な数字を目で追いながら、データを入力していく。
各部活予算。総額から、細かい内訳。スケジュールまでもデータに起こす。今度は間違えないように、項目と数字を何度も確認した。
計算式を間違えないように入力し、うっかり消去しないように保存する。

保存をした途端に、ライの意識は一瞬だけ書類から離れた。
そのわずかな隙を狙ったように、脳裏に蘇ったのは赤い景色だ。
ズキリと頭が痛んで、ライは無意識に額に手を当てた。目をつぶれば、赤がより一層鮮やかになる。

「おい、ライ。本当に大丈夫なのか?」

ルルーシュの心配そうな声に、ライは「ああ」とだけしか答えられなかった。
これでは駄目。ライはとっさにそう思った。心配させてしまう。そんなことがしたい訳ではない。
顔を上げてまっすぐにルルーシュに視線を合わせる。動きにあわせて頭痛が増したが、その痛みを気力だけでねじ抑えて、ライはルルーシュを見て応えた。

「勿論、大丈夫だよ。今度はミスしないように気をつけるから」
「それはとてもありがたいが……なあ、本当に大丈夫なのか?俺だけでも十分処理できるんだ。お前が無理に――」
「本当に、大丈夫だから。ありがとう、ルルーシュ」

ライが言い切ると、ルルーシュは不機嫌そうに黙り込んだ。
ふん、と鼻を鳴らしたが、それきり自分の仕事に戻ることにしたらしい。すぐさま新しい書類に目を通し始める。
ルルーシュの態度に、ライは安堵した。

心配させるぐらいなら怒られた方がいい。
じわじわと心を暗く侵食する不安よりは、怒りの方がマシだろう。どちらにしろ迷惑をかけてしまっているのには違いないのだけれど、少しでもルルーシュにかかる心労を減らしたい。

それに、会話が続かないのがありがたかった。
「どうしたんだ?」と聞かれても、ライには答える言葉がない。本当にどうもしていないのだ。
体調が悪いわけでもない。どこかが痛いわけでもないし、誰かに傷つけられたわけでもない。

――ただ、夢見が悪いだけで。

毎夜毎夜、同じ夢を見る。
あかい夢だ。
赤、朱、紅、あか。ありとあらゆる「あか」と表現されるだろう色が目の前に広がっている。特に禍々しい深紅が自分の両手にべったりと付いていた。気持ちのいいものではない。けれど、それは仕方のないことなのだと、夢の中では納得していた。
だから何の心の乱れもなく、ライは自分の手を見つめている。赤い、紅い、両の手のひら。爪の中にまで染み込んだ色を見つめていると、ふと何かが聞こえたような気がするのだ。
だから、顔を上げた。

顔を上げて見える光景を、ライは知っていた。何度も見ているのだから、当然だ。
見たくないと思うのに、ライはゆっくりと視界を転じる。

そこに、影があった。
赤い、朱い、紅い、あかい、アカい……人の形をした、何か。

細い影はたぶん女性のものだろう。
小さい影はたぶん子どものものだろう。

そこまで理解した途端、ライの目の前は真っ暗になった。
悲鳴は喉の奥で潰れ、声にならない声が迸る。
そこに横たわっているのが誰か、その瞬間だけライには判るのだ。
愛しい――愛しい、その影の名は……

「ライ?」

呼びかけられて、ライははっと顔を上げた。ルルーシュの紫紺の瞳に浮かぶ光を見て取って、とっさに「大丈夫だよ」と繰り返す。不審そうなルルーシュの表情は見ないことにした。

ルルーシュは一つ大きくため息をついた。どうしようもないと言いたげな仕草に、ライはわずかに俯く。確かに、こんな態度の人間が傍にいても負担になるばかりだろう。
謝罪をして退出するべきだろうか。ぼんやりとそんなことを考えるが、脚が動かなかった。
どうしてだか分からないまま、ライは結局ルルーシュの斜め向かいの席に座って、上手く頭に入ってこない書類を眺める。他にどうしようもなかった。

「ライ」
「……なんだい?」

顔を上げられず、ライは俯いたまま先を促す。
「出て行け」「鬱陶しい」そんなことを言われるのは分かり切っていた。でも、だからこそ顔を上げてルルーシュを見ることができなかったのだ。

「ライ、顔を上げろ」

ぴくりとライの肩が震えた。何が書いてあるのか理解できないままのプリントが、手の中でくしゃりと鳴く。
ライは小さく深呼吸をして、それからゆっくりと顔を上げてルルーシュの方を見た。

ルルーシュは不機嫌そうに眉を顰めて、ライを睨み付けている。
その眼の強さにライは思わず視線を逸らした。

「……ごめん」
「何に対しての謝罪だ?」
「君に……いろいろと迷惑をかけている。今だって……今までだって」

それは懺悔だった。
ライにとって居場所はここしか――アッシュフォード学園のごく限られた場所しかない。そして、その場所はミレイやルルーシュたちの完全な厚意によって成り立っている。
自分が彼らに害ある存在なら――それ以前に、有益でないなら、ライのこの場所はなくなってしまう可能性が高いのだ。何も出来ないと言うことは、彼らにそれだけの負担を強いると言うことなのだから。

分かっていながら、ライは一夜ごとにルルーシュたちの重荷になっていく自分も自覚していた。
あの夢を見た後だと、ライの心は荒れる。平静になるまでに時間が必要で、その時間は少しずつ長くなっていた。

しかし、たかが夢なのだ。
体調が悪いわけではなく、ライの心持ち一つで解決するはずの事だ。
それなのに、恩人たちに心配をかけたり迷惑をかけたりするなんて、言語道断だろう。

「――馬鹿が」

ルルーシュが小さく呟いた。
ライは小さく笑った。正確には、笑ったつもりだったのだけれど、笑顔にはならなかった。少しだけ歪んだ口元と眼は、どちらかと言えば泣き出しそうに見える。

「うん。僕もそう思うよ。ごめん。これからはもっとしっかり――」

するから、と続けるはずのところで、ルルーシュがガタリと音を立てて立ち上がった。椅子が倒れなかったが不思議なほどに乱暴な、ルルーシュらしからぬ所作だ。
驚きのあまり顔を上げたライは、真正面からルルーシュの瞳を見てしまった。苛立ちを正直に表した紫紺は、苛烈な光を放っている。

びくりと身体が震えた。
怖いと、思った。ライがルルーシュに対して恐怖を覚えたのは、初めてのことだった。
その畏怖は生物本能的なものではなかった。「傷つけられる」という不安ではなく、「傷つくだろう」と自分の心情を考えた故の恐怖。

そのことに、ライ自身が驚いた。
そんなにもルルーシュが自分に影響を与える存在になっていることに気づいていなかったのだ。

「ライ」

些か粗暴に呼ばれて、ライは小さな声で返事を返した。
ルルーシュは無言で自分の隣の椅子を引いて、指し示した。
どうしたらいいか分からない。ライは戸惑ったままルルーシュを見ていると、わずかに口調を緩めてルルーシュが再度ライを呼んだ。

「ライ、ここに来い」
「……でも」
「いいから」

ライの戸惑いも躊躇も一蹴して、ルルーシュが命じる。
ライは逆らう気力もなくて、言われるままにルルーシュの隣にまで来る。

こうなったら徹底的に怒られてしまおう。その方がお互いにスッキリするだろう。
――例え、嫌われたとしても。
そんな風に半ば諦めて、ライはゆっくりと椅子に座った。膝の上に置いた拳が微かに震えていたことには目を閉じる。

「ライ」

呼ばれた声は、温度がなかった。
いっそ冷たかったならば良かったのに、と思いながらライは立ったままのルルーシュを見上げた。

ルルーシュはライを見ていた。
顰めた眉はそのままに、けれど口元に小さな笑みを履きながら。

「――ルルーシュ?」

ぽんぽんと頭を軽く叩かれる。
いや、多分撫でられているのだ。少しだけ乱暴に。
何度かそうしてから、ルルーシュの手はゆるゆるとライの髪を梳いた。銀糸を一本一本、愛でるように丁寧に。

ライは驚いてしまってしばらく固まっていた。
どうして撫でられているのか分からない。
どうしてルルーシュがまだ優しくしてくれるのかが分からない。
どうして……涙が出るくらいに嬉しいのかも、分からなかった。

「ちゃんと仕事をしてくれないと困る」

髪を少しだけ引っ張って、ルルーシュはそんなことを言う。

「でも、無理はしなくていい」

ライの額に掛かった髪をかき上げて、続ける。

「何も言いたくなければ言わなくても構わない。――でも」

呆然と見上げていたルルーシュの眼が、少しだけ眇められた。
困ったように笑いながら、ルルーシュが囁く。

「言ってもいいと思えたら、教えて欲しい」

ライはこみ上げる感情の名前を知らなかった。
ただ胸がいっぱいになって、言葉も出てこなくなる。
泣きたいような、笑いたいような、不思議で曖昧な気持ちで、そのくせ、叫びたいほど強い衝動だった。

ライは泣く代わりに、笑う代わりに、叫ぶ代わりに、万感の想いを込めて目の前の存在の名前を呼んだ。
そんな一言ではライの感情はルルーシュには伝わらなかっただろうに、ルルーシュは慰めるようにライの頭をなで続ける。

「お前は、お前が思っている以上に、ここに――俺たちに必要な存在になっているよ」

仰いだ紫紺の瞳は、さっきまでの苛烈さを内包しながらも優しい光を帯びていた。
綺麗な色だと、心からライは思う。

「――ありがとう」

言葉はするりと口から滑り出ていた。
ルルーシュが驚いたように目を瞬かせ、それからにこりと笑う。

頭に触れたルルーシュの暖かさが体中に染み渡っていくのを感じながら、ライは自然と淡い笑みを浮かべていた。
ルルーシュがその笑みに吃驚としたのだと気づかないまま、ライはもう一度「ありがとう」と囁いた。

「傍にいてくれて、ありがとう」
「――当然だろう」

照れたようにそっぽを向いたルルーシュに、ライは笑みを深くした。
今まで胸の奥で燻っていた赤黒い悪夢が、泡沫のようにはじけて消えていくのを感じる。
代わりにそこに生まれたのは、紫色の小さな灯火。

まだ弱くて消えそうなほど小さいけれど、確かに暖かなその光が、ライに彩りを思い出させていくことになる。





いてくれてありがとう
 (傍にいるだけで与えられるぬくもりを、お前に教えられていたから)

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