忍者ブログ
このブログは、9割以上が妄想で構成されています。アニメ・ゲームへの偏愛が主な成分です。
[59] [58] [57] [56] [55] [54] [51] [50] [49] [48] [47]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

10000hit記念企画第一弾:E.verです。(笑)
もうすぐ20000hitに届きそうですが、気にしません!

肝心のシーンに行くまでが長くなりすぎました。orz
何を書き込んでいるのやら……もう、自分でも泣きたくなってきました。

文章を書くのが下手なひとが小説を書くと長くなる。と大学で言われたのですが……
文章を書くのが下手な典型が私です。。・゚・(ノД`)・゚・。
ばっさりこの部分カット!とかやるのが苦手なんですよ。うう。ごめんなさい。読みにくい文章で。
下手の横好きと言うヤツなんです。

と言うわけで、あまりに長くなってしまったのでふたつに分けることにしました。
肝心のシーン前までです。
予告通り、昨日の仮UP分は削除します。

※ スザ←ユフィ表現が出てきます。苦手な人は全力で回避してください。


+ + + + + + + + + +







行政特区「日本」中央省庁・日本代表執務室。
厳重なセキュリティで守られた特区の中央で、ゼロは黙々と自分に与えられた責務を果たしていた。

黒の騎士団のみを率いていた頃とは比べものにならないほどに大量の書類を捌いているが、それでもその判断やスピードが鈍ることはない。それはゼロ――ルルーシュの才覚による物だが、同時に彼へのサポート体制が以前よりも格段に整っていることも要因のひとつである。

ゼロという「日本」の最高幹部の一人と、ルルーシュ・ランペルージという一介の学生の二重生活をしている彼が、存分に実力を発揮できるようにと、ユーフェミアは出来るだけ彼の助力になるように努めている。
例えば、独自ルートでアッシュフォード学園からでも「日本」関係の仕事が出来るように手配したり、必要とあれば学園と「日本」間の移動・送迎手段も貸与した。そのほかにも、出来るだけルルーシュが望む生活が出来るようにと、心を砕いているのだ。
だが、そんなサポート体制の中で、実際にユーフェミア自身ががルルーシュのためにできたのは、不在が多くなった兄を心配する妹・ナナリーを慰めることだけだった。

「私は皆さんにお願いすることしかできませんから」

そう言って悲しそうに微笑んだ異母妹のためにも、ルルーシュはこの行政特区を早く完全なものにしたかった。

「少し休まないかい?適度な休息を取ったの方が効率がいい」

難しい顔で書類を睨み付けていたルルーシュは、その声に顔を上げた。視線の先では、ゼロの補佐官であり、ルルーシュの恋人であるライが微笑んでいる。片手にはティーカップ。ふわりと花のようなお茶の香りがした。

「どうぞ?」
「ああ、ありがとう」

ルルーシュはふっと肩の力を抜いた。小さく笑ってみせれば、ライも嬉しそうに笑う。
受け取ったお茶はいつもの紅茶よりも色が薄い。ルルーシュが不思議に思ってまじまじお茶を見ていると、ライが喉を震わせるようにして笑った。

「なんだ?」
「いや……初めて見る物を警戒する猫みたいだったから」
「……ライ、お前」

ルルーシュが睨め付けると、ライは小さく両手を挙げて降参のポーズをとる。だが、顔は笑ったままなので、反省の色は見えない。

「今日のお茶はジャスミンティーだよ。中華連邦からいい茶葉が入ってきたんだ」
「中華連邦?……ああ、星刻殿か」

武官にもかかわらず外交もこなすという切れ者の顔が浮かぶ。黒の騎士団に興味を示し、ライやカレンにも関心があるらしい。
頭の回転が速く、考え方にも一本筋が通っている。
人間として好ましい部類に入る人物だが、ライに対する執着故にどうにも素直に感謝できない。

「疲れたときにいいそうだよ。気分転換に変わったものもいいだろう?それに、ほら、花の香りがするから、ナナリーも楽しめるかなと思って」
「そうだな。いい香りだ」

ライのそんな小さな気配りが、ルルーシュは嬉しい。
ナナリーのことだけではない。
ルルーシュが仕事を始める前には必ず、必要な書類がそろっていて、室温は快適で、掃除は完璧に行われている。
人の出入りがかなり制限されているこの部屋を、ここまで整えられるのはライしかいない。
ライは何も言わないが、ルルーシュはきちんと分かっていた。
そんな幸福な気持ちで、お茶に口を付ける。

「結構うまいな」
「よかった。少し独特な風味だから、もしかしたら苦手かも知れないと思った」
「いや、好きだよ」

ライが本当に嬉しそうに笑う。その笑顔を見ているだけで幸せだと感じるのだから、自分は案外安い男かもしれないと、ルルーシュは内心で苦笑した。

「これを一緒に食べるのがいいと思う」
「へぇ……懐かしいな」

ライが差し出したのは色とりどりの小さなお菓子――金平糖だった。ルルーシュは昔を思い出すように目を細める。
ライは金平糖を知っていたルルーシュを意外に思ったらしい。不思議そうな顔をするので、ルルーシュは答えを教えることにする。

「昔、スザクにもらったことがある」

小さくて綺麗で、初めは食べ物だと気づかなかった。
ルルーシュがそう言えば、ライも大きく頷いた。どうやら、ライも最初に見たときは食べ物だと認識できなかったようだ。

小さな金平糖を口に含み、奥歯で噛み砕く。
ガリと音がして、口の中に甘さが広がった。しつこいほどの甘みではなく、上品な甘さだ。ふと鼻に抜けた香りで、洋酒で香り付けされていることを知る。

「おいしい」
「疲れた時には甘いものがいいからね」

これなら保存も利くし、机の中にでも忍ばせておいたらどうかとライが言うので、ルルーシュは小さく笑った。
まるで子どもが、お気に入りのものを自分のテリトリー内に隠そうとしているようだ。 もしくは越冬の小動物。そんな発想自体がルルーシュにはなかったので、新鮮で面白かった。

「それもいいかもな」

甘いものは嫌いではない。
何か小さな蓋つきの器に入れれば、十分楽しめそうだった。目にも楽しいし、何より今の会話を思い出せば暖かい気持ちになれるだろう。

ルルーシュがそんな忙しい最中の穏やかな時間を満喫している時に、ノックが聞こえた。
それはある種の爆弾に近いものだったのだが、その時のルルーシュとライには、勿論そんなことは分からない。
もし、分かっていたら、ルルーシュは決してドアを開けさせなかっただろう。

ノックと同時に、ルルーシュは机の上にあった仮面をかぶった。
この部屋への出入りは制限されているが、それでもゼロの正体を知らない者も当然やってくる。
来客時には仮面をかぶる、というのは一種の条件反射のようにルルーシュに植え付けられていた。

ライはルルーシュが仮面をかぶるのを確認してから、来客に声をかける。

「どうぞ」

ライの声を受けてから、部屋のドアが開いた。シュンと風を切るような音がして、訪問者が姿を現した。
室内に入ってきたその人物を見て、ゼロは思わず嘆息する。

「お邪魔しますね、ゼロ」
「――ユーフェミア」

にこやかに現れたのは行政特区の最高幹部のひとり。
ブリタニア側の代表であり、行政特区の立役者であるユーフェミアその人だった。

ゼロの呆れ果てた声音を物ともせず、ユーフェミアはライを見てにっこりと笑う。

「こんにちは、ライ」
「こんにちは、ユーフェミア様」

苦笑を含む口調でライが挨拶をすると、ユーフェミアは満足そうに頷いた。

そういえば、以前の行政特区中央省庁の職員朝礼で「挨拶は大切です!」と話していたな、とぼんやりゼロは考える。
日本人の伝統らしく、1ヶ月に1度全職員が参加する朝礼が行われるのだ。
あまり効率的とは言えない行事だが、日本側の意見人――つまりは扇たち――が、妙にやりたがったのだ。いわく、けじめになるとか。
ゼロには分からない感覚だったが、特に反対するほどのこともないので実施されている。
省庁の人間すべてが集まれるような広い場所はないので、基本的にはゼロかユーフェミアがカメラの前に立ち、短い話をするのを、職員がテレビ中継で見る、という形になっている。

ユーフェミアが朝礼に立つときは、どちらかというと職員朝礼ではなく学校の朝礼のようだ、というのは、彼女の筆頭騎士の弁である。
貶しているわけではないが、褒めてもいない発言だろうと推測する。

「何の用だ?」

ひとりで――警護の者もいなければ、補佐官も連れずにやってきたユーフェミアに、ゼロは厳しい声を出す。
何しろここにいるのは間違いなく「ゼロ」なのだ。
今ではブリタニアへの反逆罪やテロ活動による罪のほとんどを「保留」という形で許されている。が、ブリタニアがその気になれば、皇族殺しという1件だけでも死罪に相当する犯罪者だ。
当然、元とはいえ皇位継承権を持っていた皇女がひとりで来ていいわけがない。

何度も、それこそ「耳にタコができてしまいます」とユーフェミア自身が言うほどに何度もゼロは言い聞かせているのだが、一向に実行することがない。
「堅苦しいのは好きではありません」と、護衛を置いてくる姫君なのだ。

「せめてスザクを連れて来い。お前は私の正体を知っていて安心しているようだが、他の多くの者は知らないんだ」
「今日はスザクいないんです」

だったら来るな!と叫びたくなるのを、ゼロは何とか堪えた。
そんなゼロの前で、ユーフェミアはのほほんと「出張なんです。ちょっとキュウシュウまで」と言っている。
この状況下で唯一の心のよりどころになるべき副官のライと言えば、「そうなんですか。寂しいですね」などと相槌を打っている。
平和な光景で大変結構なのだが、何かがとてつもなく間違っているとしかゼロには思えない。

「それで、相談があるんです!」
「――何だ?」

くだらない事なら聞かないぞ、と言外に告げながら聞けば、ユーフェミアは表情を変えた。

「とても重要な問題なんです。ぜひ、知恵を貸してください」

真面目な表情のユーフェミアに、ゼロとライは目を見張る。
そっと目配せすれば、ライも居住まいを正した。そして、来客用のソファーをすすめる。
ユーフェミアはその表情を変えることなく、毅然とした態度で席に着く。そうしていると、確かにあのコーネリアの妹なのだとわかる態度だ。
ゼロもユーフェミアの向かいに座り、ライはその後ろに静かに立つ。

ユーフェミアは二人をしっかりと見て、こう言った。

「どうしたら、もっとスザクと仲良くなれるでしょうか?」
「はあ?」

 

 

 

 

「まだまだスザクは私に遠慮をしているところがあると思うんです。前よりもずっとうち解けてくださいましたが、それでももっともっと仲良くなりたいんです。確かに彼は私の騎士ですが、でも私にはすでに王位継承権もありませんし、いまのスザクの立場だって、お姉様が取り計らってくださったから騎士としているだけで、本来なら騎士ではなくて――」
「いいから少し黙ってくれ、頼むから」

一気にまくし立てるユーフェミアに、ゼロは頭を抱えた。後ろに控えていたライも額に手をやり、小さく首を振っている。
立ち直りが早かったのはライの方だった。

「ユーフェミア様」
「はい」
「とりあえず、お茶でもどうですか?」
「まあ、よろしいのですか?」
「どうぞ」

にこやかにライはカップを差し出す。
飲み慣れている紅茶よりも薄い色に、ユーフェミアは嬉しそうに微笑んだ。

「変わった香りですね」
「ジャスミンティーです。花の香りがかすかに残っているでしょう?」
「ええ、素敵です」

ユーフェミアの気がそれている内に、ゼロは素早く執務机に戻った。仕事は山積みなのだ。

まずは立地面積の問題。
特区内の自治はほぼ完全にブリタニアから独立しているのだが、土地は「間借り」状態だ。しかも、「日本」への移住希望者・数百万人が暮らすには狭すぎる。
さらに福祉面。
移住希望者の人数に対して、医師・看護士などの医療福祉関連の専門職の人数が少ないのだ。公共的な職業資格保持者、教育などの側面においても不足している。
唯一の救いは、経済面においては最強のカードを手に入れているという所だろうか。
何しろ「日本」があるのは、富士山の裾野なのだ。
ユーフェミアが――より正確には、彼女の提案を受諾したシュナイゼルが、どう言った思惑を保っているのか、まだ正確には分からない。が、とりあえずは、特区が作られたこの富士山周辺は、サクラダイトの最大の採掘場である。
今や最新技術と名がつくメカニックには、どんな分野であろうとサクラダイトのエネルギーは必要不可欠だ。そのサクラダイトを一部とはいえおさえられたのは、「日本」にとってかなりの利点である。
だからこそ、ブリタニア側の企みが怖いところではある。
もともと日本は「ものを作る」という点において、かなりの技術を有している。サクラダイトの採取同時に、加工品やその他の機器などを作ることが出来れば、経済面はある程度安定するだろう。

「ゼロ」

とはいうものの、ブリタニアという脅威からナナリーを完全に守るには、この「行政特区」という箱庭は脆すぎる。ここを足掛かりに、もっと強大な力を手に入れなければならない。

「ゼロ」

そのためにも、もう少しKMFなどの開発費を増やしたいところだが、軍事費をこれ以上増やせば特区の歳出バランスが著しく崩れてしまう。
ここはやはり――

「ゼロ!」
「……なんだ?」

顔を上げると、ライが困り果てた表情で立っている。
そして、その後ろでは異母妹が頬をふくらませていた。

「現実逃避は良くないと思う」

ライの言葉にゼロは大きなため息をついた。
いいじゃないか、現実逃避したって。とは口に出さないが、態度でライには伝わっただろう。

「ルルーシュ、聞いてください!」
「今はゼロだ!それに、この忙しい最中にそんな話を真面目に聞いてられないに決まっているだろう!」
「大問題なんですよ!ずっと考えていて、仕事がちっとも頭に入ってこないんです。私も困っているんです」

困っているのはこっちだ、と言い返したかった。
が、ユーフェミアの顔を見てしまうと、どうしても言葉が喉につかえる。

「……ゼロ」
「……なんだ?」
「僕も人のことは言えないけど……でも、相当シスコンだよ?」
「最近は自覚しはじめているから言うな」

ゼロはライから視線をそらして、ぼそぼそと言う。拗ねた子どものような態度に、ライは小さく笑う。
一応本人も気にしているらしい。が、治らないのだから意味はない。

とりあえず、これ以上ゼロの仕事を遅らせるわけにはいかない。
副官としてのライの意識が、ユーフェミアの意識をゼロから逸らすべきだと判断したのだろう。
だが、見た目に反してなかなか意志の強いユーフェミアのことだ、目的を達するまで部屋を出て行くとは思えない。
そして、ゼロは勿論のこと、ライもユーフェミアを無理矢理追い出すようなことは出来ない。
ライの決断は早かった。

「ユーフェミア様。ゼロは見ての通り仕事がありますし、僕で良ければ話を聞きますよ」
「本当ですか!」
「はい」

ユーフェミアがぱっと表情を輝かせる。華やかな表情の変化に、ゼロもライも思わず苦笑する。

「私、ライにも是非話を聞いてみたいと思っていたんです」
「僕に、ですか?」

早速、来客用のソファに戻ったユーフェミアは口を開いた。
ゼロはなるべくそちらを意識しないようにしながら、書類を片付ける。もともと集中力はいい方だから、他人の話し声がしていても仕事は出来る。

「はい。る――じゃなくて、ゼロもスザクと親しいですけど、ライも親しいですよね?」
「えぇ、同じ生徒会に所属していますし……」
「それにライは、綺麗だしカッコイイし優しいし、人気があるんですよ!」
「えぇっと……それ、僕のことですか?」
「もちろん、そうですよ」

誰だ?こんな無駄な予算案を組んだのは。
修正の赤が書類の3分の2を占める書類に、ゼロはため息をついた。全てにチェックを入れて、サインをする。少し考えて、サインの横に一言付け加える。
――もう少し頭を使って考えろ。

「どうしたらそんなに皆さんに好かれるようになるんですか?」
「あの、お言葉ですが……どなたかと勘違いされているかと思います」
「そんなことありません! 本当に人気なんですよ?とっても素敵だって」
「……ユーフェミア様がそうおっしゃるなら、そうだと思っておきます」
「はい、そうして下さい」

次は――学校の建設についてか。
教育機関は大切だからな。この辺りは扇に任せておけばいいだろう。
強いて言うならスキップ制度の導入が必要だな。日本にはなかったらしいから……

「うーん。でも、ライのように素敵になるのは難しそうですね」
「ユーフェミア様は今のままで十分魅力的ですよ」
「まあ!ありがとうございます。――そう言うことがさらっと言えてしまう辺りはスザクと似ていますね」
「はあ……そうですか?」
「そうなんです」

ハコはすぐにでも完成するから、問題は中身だな。
さし当り、それほど差別意識がない地域から臨時職員を呼び込めると一番ありがたい。だが、下手にE.U.辺りの人間を入れると、情報を盗られる可能性もあるか。

「そうだ!素敵な人の多くは恋をしてるんだそうですよ」
「はあ……どなたが仰ったんですか?」
「本に書いてありました」
「そんな本があるんですか。知りませんでした」
「今度ライにも貸して差し上げましょう」
「ありがとうございます」

それから教科書などの教材の選定も必要になるな。出来ることなら日本の伝統なども学校で学ばせて廃れないようにしなければ……ただでさえ日本人は他文化を吸収しやすいからな。
その辺りのバランスはこちらからどうこう言うより、キョウト六家に任せた方が正確か。

「やっぱりライも恋をしているのですか?」
「えっ !? 」
「あ。真っ赤。ふふ、ライは素敵なだけでなく、可愛かったんですね」
「え……あ、あの。えぇっと」
「恋人、いるんですか?」
「……は、はい。いま、す」

――どこまで考えたか。
そう、教科書だ。それから、やはりどう考えても人手不足だな。ディートハルトに人選を任せて、裏に何もいないヤツを引き抜くか。インド軍区あたりなら、まだ安全な人材がいるだろう。

「どんな方ですか?」
「え?……あ、あの……言わなければいけませんか?」
「勿論どうしても、というわけではありませんが……出来れば聞きたいです」
「じゃあ……いえ。――分かりました。お話ししますからそんな目で見ないでください」

インド軍区からの連れてくるなら、ラクシャータに任せるのもいいか。
どうせなら医療関係の人間も何人か入れたいな。ラクシャータの医療サイバネティクス関連技術を餌に、何年か研修と言う形にで日本に招くか。
その後はこちらが育てた人材を中心に使えば、職が下手にかぶって不満を招くことも少ない。

「どんな方なんですか?」
「そう、ですね。優しい人です」
「そうなんですか?ライが優しいので、少しくらい我儘な人でもいいのかと……」
「我儘、はあまり言いませんね。ああ、でもとても妹想いなので、時々妹のために無茶を言い出します」
「家族想いなんですね」
「ええ。時々妬けるほどです」

――書類がゆがんでしまった。
ああ、インクが滲んでいる。後で作り直し……するほどでもないか。とりあえず、この件はディートハルトとラクシャータに任せて、彼らがうまくいけば扇を出してこよう。
次は……

「ライでも嫉妬するんですか?」
「え?それは……しますよ。でも、嫉妬する度に恥ずかしい想いをします」
「なぜです?」
「いえ、だって――申し訳ないですから。僕よりもずっと一緒にいる家族に嫉妬するなんて」
「そういうものでしょうか?」
「違うのですか?」
「私にもよくは分かりませんが……でも、私がライの恋人の立場だったら、妬いてもらえたら嬉しいと思います。ライは違うのですか?」
「え?」
「焼き餅を焼かれたら、嬉しくありませんか?」
「そうですね……嬉しい、ですね」
「そうでしょう」

次、次は……どれだ?えぇっと――法整備の関係。これか?いや、もうこれでいい。
旧日本の法律を基にして、それに改正を加える方がいいだろうな。
成人の年齢は多少下げた方がいいかもしれない。生き残りは若い人間が多いし、彼らにはこれから先「日本」を背負うのだという気概を持ってもらわなければ。

「優しいだけではないでしょう?他には?」
「綺麗な人です」
「ライと並ぶには、やっぱり容姿が大切ですものね」
「えぇっと、恋人の方が綺麗ですよ?」
「ライよりも綺麗な人なんですか!羨ましいです」
「でも、見た目よりも心が綺麗です」

――いちいち思考が飛んでしまう。
いや、それよりも今は法整備だ。参政権を20歳以上から18歳以上とするように提案するか。
ゲットーの現状を知っている南や井上あたりからの意見を聞いた方がいいだろう。

「どちらかと言えば偽悪者っぽいですね。自分に厳しいんです。でも、人にはとても優しい人です」
「そうなんですか。なんだかスザクに聞いた"ヤマトナデシコ"という人に似ている気がします」
「変わった名前の方ですね」
「でも、素敵な名前です。ナデシコの花は綺麗ですし」

サインがゆがんだ。
これぐらいなら……読めなくもない、か。

「あ。ライの恋人さんは、どんな花が好きなんですか?やっぱりプレゼントとかしました?」
「えぇっと、なんの花が好きだろう?」
「あら?ダメですよ、ライ。お花のプレゼントは基本中の基本なんです!」
「そうだったんですか……」
「はい。それに好意を伝えるのにプレゼントはいい手段だと書いてありました!」
「やっぱり本に?」
「そうなんです。でも、スザクには何を贈ればいいのか……ライは恋人さんに何かプレゼントしたことはありますか?」
「プレゼント……手料理を振る舞ったことはあります」
「素敵です!」
「でも、恋人の方が上手なんです」
「あら。でも、こういうものは気持ちの問題だと思いますから、大丈夫です!」

集中。集中。
――ああ、何を考えていたのだったか。
顔を上げてはいけない。決してソファの方は見ない。見ない。見ない。
見てはいけない。

「それにしても、ライの恋人は完璧なのですね。優しくて、綺麗で、自分に厳しく、料理もお上手」
「ええ……でも、完璧な人などいませんよ」
「そうですけれど……じゃあ、ライは恋人は弱点とかあるんですか?」

――手が、滑った。
このサインはさすがに読めないだろう。書類から作り直さなければ……

「弱点、ですか?どうでしょう……強いて言えば、落ち込みやすいかな?結構ぐるぐる考えてしまうタイプみたいです」
「そうなのですか。じゃあ、お姉様とはお友達になれませんね」
「え?」
「悩み続けるくらいなら行動しろ!って、以前部下さんたちを怒っていましたから」
「なるほど。コーネリア様らしいですね」
「ふふ。私もいろいろ悩んでしまうので、お姉様に怒られます」
「――悩んでもいいと、僕は思いますよ」
「そうでしょうか?スザクのことも、こんな風にいろいろ考えているだけなら、いっそもっとたくさん好きですって言えばいいとも、思うんです」
「それもいいと思いますが……たくさん考えて、悩んで、それで導き出した『好き』の方が、気持ちがたくさん詰まっている感じがします」
「本当にそう思いますか?」
「はい」

ライの返事が、どうしようもなく甘い声音だった。
だから、つい顔を上げてしまったのだ。

ゼロの視界で見ることができたのは、ユーフェミアの後ろ姿と、ライの顔。
ライは、微笑んでいた。やさしく、やさしく――それはナナリーに、妹に見せるような笑顔で。

「――いいですね」
「え?」
「ライの恋人さんです。羨ましいです。だって、ライ、あなたはとても恋人さんのことが好きでしょう?」

驚いたように、ライは目を見開いた。そして、ゆっくりと弛んでいく。
――ああ、ダメだ。見ていられない。
そう思うのに、ルルーシュの視線はライに固定されてしまった。
あまくあまく、それこそ恋人に向ける笑みでライは微笑む。

「好きです。優しいところも綺麗なところも、偽悪的で天の邪鬼で、でも傷つきやすくて、妙に家庭的で、いろいろな矛盾を抱えているところも――好きですよ」

ユーフェミアが息を呑むのが、聞こえたような気がした。 見なくても分かる。きっと赤面しているのだろう。
そんなことを考えているゼロ自身、頬が熱い。

――ああ、本当に。
ため息をつきたくなるのを堪えて、ゼロは口を開いた。

「ユーフェミア」
「はい?」
「そろそろスザクが帰還する頃じゃないか?」

言えば、ユーフェミアは慌てて立ち上がった。スカートの裾をさっと直して、実に優雅な足取りでドアに向かう。

「ライ、ありがとうございました。ゼロも」
「はい。転ばないでくださいね」
「大丈夫です!」

そして、入ってきたときと同じように唐突に出て行った。
その後ろ姿を見送って、ライは思わず吹き出した。

「まるで小さな台風だな」
「ああ」
「さあ、少し余分に休憩してしまったから、急いで仕事を……ゼロ?」
「なんだ?」

極めて冷静な声でゼロが返せば、ライは戸惑ったように視線を彷徨わせた。
そして、無意識にだろう、一歩後ずさる。
当然のようにゼロは一歩近づいた。

「どうした?ライ」
「いや……なんだか、雰囲気が変じゃないか?」
「そうかな?」

ライがさがり、ゼロが前進する。何度か繰り返せば、いくら広めの執務室とはいえ、逃げ場がなくなるのは道理だ。
ライは背中を壁にぺたりとつけて、ゼロと対峙するような格好になった。
自分でもどうして自分が逃げているのかが理解できていないのだろう。戸惑い、不安そうな表情をしているライに、ゼロは微笑んだ。
仮面がなければ、ライが本気で逃げ出すような類の笑みで。

「ここ最近、忙しかったな」

天気の話をするように、気軽な口調だった。
だから、ライも戸惑いながら応えることが出来た。

「そうだな。もうすぐ移住の第二次募集がかかるから、いろいろ決めなければならないことが山積みだから……ゼロはここ2週間ぐらいはかなり忙しかっただろう?」
「お前はお前でキョウト六家に呼ばれて、何日かここを離れたしな」

いいながらゼロは仮面を脱ぎ捨てて、ルルーシュに戻る。
現れた紫紺がライを射抜く。 その瞳の奥に情欲の炎がちらついているのに気づいたライが、肩を跳ね上げる。が、逃がすつもりはない。

「……ルルーシュ?」
「つまりは、俺は2週間以上もお前に触れていないわけだ」

ライの細い頤に指をかけて、わずかに持ち上げる。そのまま、唇に舌を這わせた。
びくり、とライの身体が震えたが、抵抗はほとんどない。 その代わりに咎めるような水色の瞳が潤んでいた。
その瞳を見つめながら、ルルーシュは苦笑いを浮かべる。

「お前は本当に、明確に『ルルーシュ』と『ゼロ』を分けるな」
「え?」
「さっきのユフィとの会話だ」
「ユーフェミア様との?」

うまく頭が回らないらしい。ぼんやりとした口調で、ひどく幼い印象を受ける。
ルルーシュは頷いて見せてから、そっと首筋を舐めた。高く掠れた声がライの口から上がるのを、心地よく聞く。

「あの会話を、俺が――ルルーシュが聞いているのを忘れていただろう?」
「え?……あ」
「あそこにいたのは『ゼロ』だからな」

思い当たったのか、ライが目を瞬かせた。そして、ばつの悪そうな顔をする。

「すまない。公私を分けるつもりだったんだが……行き過ぎだったか?」
「いや、好ましいくらいだよ。俺も仕事とプラヴェートは分けたいからな」

でも、とルルーシュは笑う。獲物を狙う肉食獣の笑みに、ライは息を呑んだ。
怖いと想うと同時に、ただ綺麗だと感心してしまうのだ。

「あんな甘い言葉と顔を見せられて、我慢できるわけがないだろう?」







To be continued.




********************


長い。orz
最初のジャスミンティーのくだりとかいらないんじゃね?とか、ユフィ出過ぎじゃね?とかいろいろ聞こえてきそうです。。・゚・(ノД`)・゚・。

このシチュエーションで書くと決めたときに、「ライとユフィが恋愛話をしている横で黙々と仕事をしてる(けど、実はあまり集中できていない)ルルーシュ」というのが書きたくて……!
こんな状態になりました。( ・3・)アルェー

基本的に、地の文章では仮面をしていれば「ゼロ」、していなければ「ルルーシュ」と気をつけてかき分けていますが、今回は1ヵ所だけあえて仮面をしているのに「ルルーシュ」にしてみました。
無駄なこだわりでスミマセン。

ユフィの出過ぎは愛故に。
某書き込み式投稿動画サイトを覗くと、ユフィ批判派が多くて悲しい。・゚・(ノД`)・゚・。
ユフィが微妙に我儘っ子になっているのは、某歌唱機械少女のオリジナル曲「ワー/ルド/イズ/マイ/ン」を聞き続けた結果だと思います(笑)名曲ですね。可愛すぎるっ!(*´Д`)

ところで、この話を書いているときに行政特区について考えてみたのですが……現実的に考えると、成立ってメチャクチャ難しいですね。
最大のネックは土地でしょうね。何人の日本人が参加予定だったのか分かりませんが、それだけの人数が生活する場所をブリタニアが明け渡したというのが……どうも裏がありそうです。
しかも、富士山周辺。サクラダイトの採掘ができる貴重な土地ですよ!
ユフィは大好きですが、為政者としては評価していません。
なので、これらの場所とかその他諸々の手配をしたのはシュナイゼルだと考えています。
となると、何を企んでいたんでしょう?
最初がからうまくいくわけがないと思っていたのか……それとも、それこそユフィも捨て駒にして、黒の騎士団を無力化後、不穏分子が集まったところで一気に叩く、と言うのが一番ありそうかなあ。
シュナイゼル、怖えええ!(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル ←いや、自分の妄想だし。(笑)

録画した10話を見てすぐに後書き中書きを書いているので、どうも変なテンションで申し訳ないです。
明日か明後日ぐらいには、肝心のシーン部分をUPできるようにしたいと思います。

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
02 2025/03 04
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
web拍手

御礼5種類。ランダム表示
カウンター
最新コメント
[10/17 有為郎]
[09/29 月花]
[09/29 黎榎]
プロフィール
HN:
青紀月花
性別:
女性
職業:
司書
趣味:
読書・料理・散歩
ブログ内検索
アクセス解析
Powered by ニンジャブログ  Designed by ゆきぱんだ
Copyright © そして、僕は色彩を知る All Rights Reserved
忍者ブログ / [PR]