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このブログは、9割以上が妄想で構成されています。アニメ・ゲームへの偏愛が主な成分です。
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記念すべきヴェス小噺第1弾!
……しかし、リタが好きすぎて、リタユリリタっぽくなり、修正を加える内に迷走したというトンデモ作品になってしまいました。orz
PT家族だから!と言い訳をしつつ、謝罪しておきます。ごめんなさい。

小噺本文は続きからどうぞ。

 


+ + + + + + + + + +


ダングレストの街に着いた途端、レイヴンが相変わらずの胡散臭い笑みを浮かべて言った。

「そ~そ~、俺様、ちょっとばっかしユニオンに呼ばれてんのよ」

ギルドと騎士団の二重生活をしていた男は、どうしたことか随分と信頼されている。リタには理解できないのだが、下から慕われるカリスマのようなものを持っているらしいのだ。

「じゃあ、ユニオン本部に行けばいい?」

戦闘で跳ねるように歩いていたカロルが身体ごと振り向いて聞く。それに否を唱えたのは、レイヴン本人ではなく、カロルの隣を歩いていたユーリだった。

「おっさんが個人的に呼ばれてるってことは、"天射る弓"の用事だろ?オレらが行っても仕方ない」

ユーリは言いながらレイヴンに視線を送る。レイヴンは小さく肩をすくめて見せた。

「まあねぇ。おっさんとしては、あんまり働きたくないんだけど」

拗ねたような仕草は、リタから見ればばかっぽい。ここで不満を訴えても仕方ないのに、グチグチと文句を言い続けているのも非効率的だ。
多少イライラしてきた感情を、リタはぐっと堪えた。
街中なのだ。その上、レイヴンの隣にはエステルがいる。

そのエステルはにこやかにレイヴンを励まし、ジュディスは応援なのか追い打ちなのか分からない言葉を掛けていた。がっくりと肩を落したレイヴンに、今度はパティから混ぜっ返すように声が掛かる。
街の喧噪にまけないぐらいに賑やかな一行の最後尾で、リタは小さくため息をついた。




レイヴンを待つ間は自由行動ということになった。
リタは嬉々として宿屋に赴き、机に陣取る。旅から旅の毎日を嫌だとはおもわないが、じっくりと腰を据えて研究できないのは難点だ。

普段よりも長い自由時間を存分に満喫すべく、リタは机の上だけでなく隣のベッドにまで、資料や自分が書いたメモなどを広げた。
頭の中で理論を紡ぐだけなら必要のない物だが、研究は広く活用して後世に残さなければ意味がない。そのためには形のあるものにしなければならないのだ。

ペンにインクをつけ、真新しい紙の上に滑らせる。
新しい理論、発見した法則、発展させた術式。
旅の中で得られた知識や経験は何よりも勝る。脳内で色とりどりに展開した考察をひとつひとつ文字に変換していく。

……しかし、どうにもうまくいかない。
自分ではわかりきっていることをかみ砕いて説明するのは、かなり面倒だ。なにしろ、どう書けば伝わるのかがいまいち分からない。
リタにとっては息をするのと同じくらい簡単なことなのに、それが理解できないと言われると困惑してしまう。

ペンを走らせ……止め、紙を破り捨てる。
――ペンを走らせ……止め、神を破り捨てる。

幾度となく同じ事を繰り返した後、リタは些か乱暴にインク瓶にペン先を突っ込んだ。
かしゃんと小さな音と共にインクが数滴飛んだ。

妙にイライラする。
意識的に深呼吸をして気持ちを落ち着かせようと努力はするものの、あまり効果はない。全ての努力が報われるとは限らないのだ。

「あ~っ!もう!! 」

気分のままに叫び声をあげたのと、ドアがノックされるのはほぼ同時だった。

頭をかきむしった体勢のまま、リタは思わず固まった。
聞かれていないはずの心情の吐露は、ドアの向こうに誰かには確実に聞かれてしまった。
気まずい上に、恥ずかしい。

ノックの主はリタのそんな気持ちを見透かしたように、小さな笑みを含む声で話しかけた。

「リタ、入るぞ」
「……どーぞ」

声がやや拗ねてしまうのは止められなかった。
ゆっくりと開いたドアの向こうには、笑いを噛み殺したような表情でユーリが立っていた。手にはお盆を持っている。

「何?なんか用?」
「大した用じゃないけどな」

言いながら部屋に入ったユーリは、机とベッドの惨状にわずかに柳眉をひそめた。
そんな些細な表情の変化すら人目を惹きつけるのだから、美人はすごい。
リタはユーリから視線を外しながらそう考えた。ユーリやジュディスなどで美形にはいい加減慣れてきたが、時々ふいの表情がドキリとするのだ。
美人の威力は感心するが、同時に少しばかり面白くない気分になる。

「とりあえず、机の上を開けてくれ」
「……何なのよ、もう」

びしっと指をさしての要望を、リタは文句を言いながらも叶えてやった。机の上の書類を一ヵ所に集めると、それなりのスペースができる。紙の束はまるで本のように分厚くなった。

どんどん厚くなる束を見て、ユーリは呆れたようだった。
読書の習慣はないと言っていたから、紙や文字が大量にあること自体が、ユーリにはなじみがないのだろう。しかしリタにとっては、本が身の回りにあることが当然だった。むしろ、今ほど文字のない生活をしたことがない。

「これでいい?」

ある程度のスペースを空けると、ユーリは満足そうに頷いた。そして、恭しい動作でリタの前にお盆を差し出す。
見れば鍋焼きうどんに使っている一人用の土鍋が鎮座していた。

「……何?」

思わず尋ねる。ユーリは平然と「食事」とだけ答えた。
確かにふんわりといい匂いがする。だしのきいたスープの香りだ。

「それは分かってるわよ。そうじゃなくて、何でって話でしょ?」

リタの不機嫌な言葉もさらりと聞き流して、ユーリは鍋の蓋を開けた。
中にはリタの見たことがない料理が入っている。

赤いスープの中に細かくサイコロ状に切られた野菜とご飯が入っている。
どうやらミネストローネに誓い物らしい。警戒してくんくんと匂いを嗅いでいたリタは、そう結論づけた。

「お前、体調悪いだろ?」
「ふぇ?」

謎の料理に気を取られていたから、ユーリに言葉にとっさに反応できなかった。
驚いてユーリを見れば、まっすぐにリタを見つめる視線にぶつかる。

ユーリの目は強い。
闇の中の一条の光のような印象だ。その光は時と場合によっては、全てを燃やし尽くそうとするように鋭く激しくなることがあるのだと、リタは知っている。けれど、多くの場合――そして今も、その光は春の陽だまりのように暖かい。
包容力があるというのだろうか。何でも「大丈夫だ」と思わず思ってしまうような目なのだ。

リタは頬が熱くなるのを感じた。
見惚れてはいけない。これは所詮ユーリなのだ。

「朝から動きが少しおかしかった」
「そ、そお?」
「食事も、あんまり食べれてなかったろ?」

よく見ている。
リタ自身、自分の不調には気づいていた。
しかし、普段通りに動けないという程の不調でもなく、また休みが欲しいと思うほどのことでもない。ただ少し頭が痛くて、食欲不振なだけだ。明日になれば治るだろうと思っていた。
その程度のことだから、気にしていなかったのだ。
実際、エステルやカロルはリタの変調に気づいてはいないだろう。

「食べやすいようにスペシャルメニューにしたから」

少しでも食べろ、とユーリが微笑む。
伸びてきた手がぽんぽんと柔らかく頭を撫でていった。

白い指。長い指は男性らしくやや節張っているものの、剣や斧を扱う戦士とは思えないほどに華奢だ。
それなのに、その手は誰よりも力強い。

「スペシャルメニュー……?」
「そ!ミネストローネごはん。まあ、なんちゃってリゾットだな。消化もいいし、栄養もあるぞ」

まるで不思議な言葉を聞いたように、ユーリの言葉が頭に入ってこない。
――すぺしゃる、スペシャル。特別。
そんなことばかり頭をグルグルし始めて、リタは焦って鍋を覗き込んだ。別のことを考えてないと、脳みそが茹だりそうだ。

ユーリの言葉を肯定するように、鍋の中身はスペシャルだった。
ブロッコリーやかぼちゃ、豆、葉物の野菜など、様々な具が入っている。普段使わないような食材も多く見受けられた。トマトのスープは鮮やかで、思わずこくりと喉が鳴る。

「食べられそうなら食べてくれ」

その言葉から推察するに、ユーリがこれを作ったのだろう。
器用な男だ。
料理はこのパーティーの中では1、2を争うほどうまい。自分の武具は勿論、ラピードの武器なども手入れしている。いろいろなことを何でもないことのようにやってしまう。
それなのに、気負いを感じさせることもなく、常に自然体。
本当は何でも出来るのではないかと、時々勘ぐりたくなるのだ。

リタはスプーンを手に取り、じっとミネストローネのリゾットもどきを見つめた。
美味しそうだ。いや、実際に美味しいのだろ。
けれど、素直に食べるのは何となく躊躇われた。

心配されるのはくすぐったいのと同時に、少し悔しいのだ。
それは、弱い面を見られているというだから。高いプライドが邪魔をして、なかなか素直に感謝できない。

そんな心の機微すらユーリには分かるのか、小さく苦笑してから、まるで独り言のように呟いた。

「多分、だけどな。おっさんの用事って嘘だぞ」
「は?」
「お前の様子が変だって、最初に気づいたの、おっさんだと思う」

本を適当にどかしてベッドに腰掛け、ユーリは小さく首を傾げた。
さらさらの黒髪が方から滑り落ちる。

リタの優秀なはずの頭脳は相変わらず低速稼働しかしていないらしい。呆然とユーリの髪の動きを見つめただけで、さっぱり言葉の方は頭に入ってこない。

「休む時間さえあれば、リタが休むと思ったんだろうけど……ま、自主的に休むわけないよな」

にやりと笑う顔は、普段より幼く見える。
意地が悪い顔を睨み付けて、リタは低く呟いた。

「あんたにだけは言われたくないわ」

妙に熱くなってしまった頬や首を誤魔化すように、力強くスプーンを握り直して、そのまま口に運ぶ。
やや熱かったが、吐き出すわけにもいかない。なにより、吐き出すなんて勿体ない。

――美味しい。
悔しいぐらいに、美味しいのだ。
トマトの酸味とコンソメスープの旨味が舌の上に広がる。刻まれた野菜にスープがしみこみ、ベーコンの塩味と脂がほどよく出ている。
ごはんがはいっているからか、いつもよりとろりとした舌触りで、食欲はなかったはずなのに、すると喉を通っていった。

「食べられそうか?」

ユーリの問いに、リタはスプーンを咥えたままこくりと頷いた。

「そうか、よかったな」

目元をわずかに弛ませたユーリが、ぽんぽんとリタを撫でる。
子ども扱いするな!とか、余計なお世話よ!とか、人のことより自分のことを心配したらどうなの!とか。言いたいことは山ほど在るのだが、ミネストローネごはんとともに喉奥に引っ込んでしまった。

「嘘つかれたからって、あんまおっさん、いじめてやんなよ」
「……そうね。おっさんがばかっぽい事、しなきゃそうしてもいいわよ」

大きな目を2、3度瞬かせたユーリは、破顔した。

「そりゃ無理だな」






生きやすい道を選ばない馬鹿たち。
不器用な優しさの大馬鹿たち。
自分もその内のひとりだと思うと、自然と笑みが浮かんだ。



馬鹿の寄せ集め



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お題は「リライト」様から借りました。
「愛すべき仲間たちへ十の御題」という素敵なもので、PTメンバーとユーリで何作か書こうかと思っています。

今回はリタ。
大好きだツンデレ娘!(笑)
一応、気持ち的には「ユリ+リタ」であって「ユリリタユリ」ではないと主張します。ほんのり「ユリ←リタ」なんはデフォ。ユーリはみんなに愛されていればいいと本気で思っています。

さて、PTと言えば。
TOAの時は、PTメンバーの好き嫌いが激しく、戦闘参加キャラは固定だったのですが……(ついでに、操作がルークで、ジェイド、ガイ、ティアが固定。アニス・ナタリアはほとんど戦闘に参加していませんでした。)
TOVは戦闘参加キャラどころか、操作キャラまでいろいろ変えて楽しんでいます。
一応、我がベストメンバーは、操作:ユーリで、レイヴン、リタ、ラピード。
ラピードがジュディスでもいい。
あるいは、レイヴンとエステル、もしくはカロルが交代するか……
ユーリとパティが交代します(操作キャラという意味で)。
ただし、ボス戦ではパティは怖すぎて使えない。うっかりクリティカルモーメントでHP・TPが半分になったとか、まじで笑えない。秘奥義で若本召喚とかも笑えない。orz

2周目の2部真ん中あたりまできました!
頑張って称号集めて、うさみみをゲットしますよ~!
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