プレゼント用のお話がようやく完成いたしました。
ルートは学園編ルルED後で。ふたりは互いの秘密を打ち明けた後、ライが黒の騎士団に入団している設定となっております。
とはいうものの、gdgd過ぎて差し上げるにはちょっとどうかと自分でも思います。
返品可です。リテイクもOKです!
うわーん、ごめんなさいっ!。・゚・(ノД`)・゚・。
龍劉様、よろしければ拍手の後日談(もどき)ごと、どうぞ。
――最初にライの異変に気付いたのは、ナナリーだった。
ライとルルーシュとナナリーと、3人でのお茶会は久しぶりだ。
発案者はルルーシュで、当然のように「ナナリーが寂しそうにしているから」が理由だった。ライはそのいかにもルルーシュらしい提案に苦笑しながら、楽しみにしていた。
だから、ナナリーお勧めのお茶菓子が並び、ルルーシュが淹れた紅茶が振る舞われ、兄妹の寛いだ笑顔を見ていれば、十分に安らいだ気分になっていたのだ。
しかし、しばらくしてナナリーが小さく首を傾げ、表情を曇らせた。
「ライさん、どこか具合が悪いのですか?」
「え?」
ライはナナリーの言葉に驚き、心配そうに柳眉を寄せる表情に些か慌てた。
ナナリーに心配をかけたり、ましてや不安にさせるなんていうことを、隣の席に座っている兄が許すわけがない。何より、そんなことになったらライ自身が自分を許せないだろう。
「どこも別に悪くないけど……どうしてそう思ったんだい?」
ライが尋ねると、ナナリーは表情を和らげた。
「いえ……気のせいならいいんです。ただ、いつもと雰囲気が少し違う気がして」
「そうかな?うーん……」
思い当たり事がなく、ライも首を傾げる。
ふたりで首をひねる姿に、ルルーシュは小さく笑いながら言った。
「あちらこちらに顔を出しているようだからな。疲れがたまっているんじゃないか?」
そうなのですか?と愛らしく聞き返すナナリーに微笑み返しながら、ライはルルーシュを睨めつけた。
唇の動きだけで「誰のせいだ」と罵れば、余裕の表情で「俺のせいだな」と返してくる。
妹に比べると酷くかわいげのない兄の態度に、ライは苦笑いした。こんなやりとりをいやじゃないと思っている自分に一番呆れてしまう。
「そういえば、学園祭のころよりも外出されている時間が多いみたいだって、生徒会の皆さんが言ってみえました。ミレイさんも心配していましたよ?」
それは悪い事をしたと思いながら、ライは紅茶を飲む。丁寧に淹れられた紅茶は、豊潤な香りがした。
「学園の外に友人ができてね。彼らに会いに行っていたんだ」
「お友達ですか?」
「ああ、ちょっと……いや、かなり気難しい友達なんだけどね」
言いながらルルーシュを見れば、苦虫をかみつぶしたような表情をした。
ライは楽しくなってきて、喉を震わせながら笑う。
「警戒心が強くて、でも、その割には結構自分を見失って危なっかしいところもあるし、妙に弱気なところがあったりするけど、やたら攻撃的なときもあるし……」
ライが「友人」について話せば話すほど、ルルーシュは不機嫌そうに顔をしかめる。ナナリーが興味深そうに話に聞き入るので、止めることも出来ないらしい。
ライはにっこりと笑いながら、さらに言葉を続けた。
「でも、とても優しい……いいヤツだよ」
「ライさんのお友達ならきっと良い方なんでしょうね。会ってみたいです」
「うーん、人見知りが激しいからなあ」
ライは言いながらルルーシュを見ると、真っ赤になっていた。口を開けたり閉じたりしている。どうやら怒ればいいのか照れればいいのか、自分の感情を制御できていないらしい。
「とりあえず、今度聞いてみるよ」
「はい、お願いします」
ナナリーが笑って、ライも笑う。ルルーシュはしばらくどう言った表情をすればいいのか判断をつけかねていたが、ふたりが笑っていれば幸せには違いないと、微笑んだ。
穏やかな時間。
失えない空間。
その中にいながら、それでもどことなく漂う不安をぬぐい去れずにいた。
思えばこのとき、もう少しナナリーの話を良く聞いておけば良かった――と、ルルーシュは後悔することになる。
――ライが倒れた。
報告を聞いたとき、ゼロはその言葉の意味が理解できなかった。
聞き返すと、カレンが半ば悲鳴のような声で訴える。
「ライが倒れたんです!あの、KMFシミュレータで模擬戦をしていて、終わったら、そのまま……っ!」
ゼロはカレンの報告を全て聞くことなく、すぐさま駆けだしていた。
シミュレータ室に行くとそこにはまだ力なく横たわる身体があった。人が取り囲み、どうすればいいのかと話している。
「動かすな!」
ライを揺すろうとしていた者に対して、ゼロは思わず声を荒らげた。
ただの気絶というのであればまだしも、原因が分からない状況で下手に身体――特に脳への振動を加えていい訳がない。
「ラクシャータを呼べ」
「もう来てるわよぉ」
ゼロが指示を出すまでもなく、すでに医療関係にも強いラクシャータが呼ばれていたらしい。
「通してねえ」などと言いながらライの周りの団員たちを避けて、ラクシャータが近づいてくる。ライの状態をさっと調べる手際は流石のものだった。
「特に外傷はないわね。昏睡という感じではないから、とりあえず安静にさせるのが一番ね」「そうか……動かしても構わないな?」
「担架かなにかでねぇ。出来るだけ揺すらない方がいいわ。気がついたら精密検査をしてみましょ」
ゼロはうなずき、治療室にライを運ぶように命じる。慌ててカレンが担架を持ち出し、扇たちがライの身体をゆっくりと持ち上げ担架に乗せる。
それを見つめるゼロの右拳が、震えるほどに強く握られていたことに気づいた団員はいなかった。
治療室のベッドにライを寝かせると、ゼロは団員たちに退室を命じた。――誰も入ってくるなと。
不審がる団員に舌先三寸で無理矢理納得させる。部屋に鍵をかけ、団員たちの心配そうなため息も無視を決め込む。
ベッド脇のイスに座り、ゼロ――ルルーシュは仮面を外した。そっと息を吐くが、息苦しさは増すばかりだ。
まだ震えている手に驚いて、自嘲の笑みを浮かべる。
――怖かったのだろうか?
ライが倒れたと聞いて、頭が真っ白になった。失えないと強く思った。
それは事実だが、少し違うような気がした。
ルルーシュは手袋に覆われた手で顔を覆った。
――怖かった。けれど、同時に怒っていた。
ナナリーに言われても気づかなかったこと。
注意してみれば、仮面越しでも分かるほどにライの顔色は悪かったのではないか。
眠るライを見れば、頬がこけている。首筋など折れそうなほど細く感じる。
こんなにも、無理をさせていたことに気づけなかった自分が忌々しい。
ライがルルーシュのすべて――出生も野望も特殊な能力も、すべてを受け入れてくれてから、ライはルルーシュの最大の協力者であり助言者であった。
黒の騎士団に入団したのはごくごく当然の成り行きであったと言っていい。
唐突に現れ、ゼロの右腕として働き始めたライに、当初は団員たちもあからさまに怪しがった。だが、カレンの後押しや、ライの能力や為人を知っていくうちにどんどん溶け込んでいった。
いまでは随分と頼りにされている。
そして、ルルーシュ自身も。
ライを頼っていたのだ。
事務的な処理で済むような案件は、ゼロまであがるより先にライが処理することが多かった。後に報告が入るが、どの処理も最善と信じられるものばかりだった。
また、ゼロとして必要な情報を一度ライに通せば、正確で無駄もない報告になる。さらに、ゼロが意見を求めれば、的確な判断が返ってくるのだ。
分かっていた。
ライに必要以上の重圧がいっている事ぐらいは。
ルルーシュが頼むことばかりだけではない。ゼロとは違い声をかけやすい立場にいるライに、団員たちも様々な要望を上げていただろう。そして、それに最大限に応えているライが容易に想像できる。
また、生徒会の仕事も手を抜いていなかった。黒の騎士団での仕事に比べれば楽だろうが、なにせ数がある。
生徒会の仕事に参加できていない、ルルーシュ、カレン、そしてスザクの分までもライが行っていたのだろう。
明らかなオーバーワークだ。
今回倒れたのがただの疲労であればいいと願う。
それならば馬鹿なことをするなと叱り、悪かったと謝罪して、あの優しい時間に戻れる。
だが、これが……
これが、ギアスの暴走の兆候であったら?
あるいは未知の病であったら?
ライは特異な存在だ。
おそらく存在する最古のギアスユーザーであり、時代を超えた身体の持ち主だ。
さらには何らかの人体実験を受けている。
どれが原因でも、通常の医療では完治などできそうにない。
「――ライ……!」
失いたくない一心で呼んだ声は、震え掠れていた。
その呼びかけに答えるように、ライの瞼がかすかに震える。
ルルーシュは慌ててライの手を握り、再度呼びかけた。
「ライ!」
「……ん」
身じろぎをして、ライの目が開いた。
ぼんやりとした目はうつろで、焦点があっていない。
だが、確かに目覚めたことにルルーシュは安堵した。
「よかった、ライ。気がついたな?」
「……ここ、は?」
「治療室だ。とりあえず、安静にしていろ。すぐにラクシャータを……」
「私は……なにを?」
ちいさな呟きに、ルルーシュは違和感を感じた。
「ライ?」
「私は何をしていたんだ……どうして、こんなところに?」
雰囲気が、違う。
焦点の合わない瞳をみて、ルルーシュは自分の体温が下がっていくのを感じていた。
ライは、確かに拾われた当初は無表情で無機質な雰囲気だったが、最近はあたたかで穏やかな表情が多い。それなのに、今ベッドに横たわるライは、冷たい印象しかない。
これは、まるで――
ルルーシュは戸惑いながらも、そっとライの額に触れた。
びくりと、ライの身体が震える。
「急に倒れたんだ。覚えているか?」
「私が、倒れた?……ああ、そうか。なんだ、ずいぶんと弱い身体になっているな」
ライに浮かんだ自嘲に、ルルーシュは眉を寄せる。
「お前は……」
「私は、昔からこの程度のことはしていた。倒れるようなことはなかったんだがな……さすがに眠ってばかりいたとはいえ、数百年の時間からは逃れられないか。それとも、あの研究所が原因か?まあ、どちらでも構わないが」
言いながら起き上がろうとするライに、ルルーシュは驚いた。まだ、起き上がっていいはずがない。
肩を押さえ、ベッドに横たわらせる。
ライはそんなルルーシュを不思議そうに見上げていた。
「仕事がまだあるのだろう?」
「お前は倒れたんだ!安静にしていろ!……それに、いつもと違うだろう」
「違う?」
「自分で分かっていないのか?」
ライはベッドに押さえつけられたまま、首をかしげた。
きょとんとした表情はいつものライと同じものなのに、瞳の温度だけが決定的に違う。
「分からない――私は……でも、急がないと」
「なにを?」
「はやく、と急かされるんだ」
ライは辛そうに顔をしかめた。
右手を心臓の上に添えて、服を握りしめる。指先が白くなるほど強い力で握った布地がきりきりと音を立てた。
「内なる声がする。怯えて震える声が……だから、私はいつも焦っている」
ルルーシュは小さく首を振り、イスに座り直した。
どうやらライは本格的に混乱しているようで――そして、その混乱を自覚していないようだった。
動揺し、同じように混乱しそうになる心と頭を必死でなだめて、ルルーシュは勤めて平静な声で言った。
「話してくれないか?」
「なにを?」
「お前の話だ。思えば、俺の事は結構話したのに、お前のことはあまり聞いていない気がする」
「……話すのは得意じゃない」
「そうか。でも、知りたいんだ。お前が何でそんなに無茶をしているのか……何を、焦っているのか」
ライは少しだけ考え込むように悩んでから、ゆっくりと口を開いた。
「私は……君を見ていると不安になる」
どうしようもない不安は経験から来ている。
君は私によく似ている。母を、妹を想い、故に自分を犠牲にしても『平和』という幻を手に入れようとしている。
だから、不安なのだ。
ライはきつく目を閉じて、絞り出すような声で言った。
「君が私と同じ道を歩んでいくのが見えるような気がする。君が大切にしたい者を守るために、大切な者を失っていくのが――」
ルルーシュはそっとライの頬を撫でた。
その感触にライは目を開ける。
「私に出来ることは戦うことだけだ。出来ることが……少なすぎる」
辛そうに言うライに、ルルーシュはため息をついた。
ライがどれだけルルーシュの支えになっているのか、彼は分かっていないらしい。
「ライ」
「だから、急がないといけない。――どけ。」
「……嫌だ」
「どけ。私は戦わないといけない」
「確かにお前のKMFの腕は買っている。だが、それだけじゃないだろう?」
「それだけだ」
ライは言い切った。
自分には、戦うことしかできないのだと。
「違う、お前は――」
ライの瞳がキラリと光った。それはとても美しく、酷く剣呑な光だ。
ルルーシュは思わず身を引きそうになった本能に逆らって、ライの肩をさらに押さえつけた。
ライは目を細める。口元には笑み。けれど、目が笑っていない。
「どけ。私がお前を助けてやろう。だが、邪魔をするな」
「……俺のためだというなら、今は寝ていろ」
「違う――私は、もう誰かのために行動できるほど優しくない」
無表情に言い放った言葉は、ルルーシュには矛盾しているように聞こえた。
確かにルルーシュを助けると言ったのに、それはルルーシュのためではないと言う。
能面のような表情の中に、冷たい光を放つ眼がわずかに揺らいだように見えた。
「だが、お前は俺を助けてくれるのだろう?」
「そうだ」
「それは何故だ?」
まっすぐに冷たい青を見つめれば、視線が逸らされた。
それでも、じっと待つ。
「――君は、絶対に私を否定しないから」
ライが小さくつぶやいた言葉に、ルルーシュは目を瞬かせた。
「私は否定されたくない。だから、私は保身のために君の味方をしているにすぎない」
「俺がお前の何を否定しないんだ?」
「すべて」
『私』がしてきたことは正しいことではない。
大切なものを守るためとはいえ、大切だと思えないものを斬り捨てていいということにはならない。
でも、『私』には取るべき道がそれしか見つからなかった。
正しくないと知っている。
けれど、その精一杯を否定しないで欲しい。
罵っても、蔑んでもいい。憎んでも構わない。そんな感情を向けられることは覚悟している。
けれど――
「否定されたくはない。確かに私は、愛していたのだから……」
「――なるほど。確かにそれは……俺には否定できないな」
ルルーシュは小さく笑った。
ライが歩んできた道はルルーシュが歩んでいる道筋とひどく似通っている。その道を否定するということは、ルルーシュにとって自分自身を否定されるのと同じことだ。
そして、ライの思考がルルーシュには手に取るように分かった。
自分自身をトレースするようなものだから、当然だ。
ライは恐れている。
ルルーシュが同じ道筋を進み、同じ結末に至るのを。
ライは怯えている。
自分自身が誰かを不幸にする愛し方しかできないことを知っているから。
ライは嘆いている。
同じことしか繰り返せない自分を。
――戦い、あるいはギアスによってしか大切な者を守れない自分自身を。
ライのことが分かりすぎるほど分かって、ルルーシュは微笑んだ。
嬉しいと思う。
切ないと思う。
けれどなにより、愛おしいと思う。
「ライ、大丈夫だ」
ルルーシュの言葉に、ライは不審そうな眼を向けた。
他の誰でもないお前が言うのか、とその目が鋭さを増す。
それでも、ルルーシュは笑みを浮かべていられた。目の前にいるのが、他の誰でもない「ライ」という一人の人間であることを知っているから。
「大丈夫だろう?だって、お前は『ライ』なんだから」
「……どういう意味だ?」
「そのままだよ。お前はもう、自分のことを『私』と言っていた孤独な王ではない。記憶を失い、右も左も分からず、無表情に日々を過ごしていたヤツでもない」
ライが何か言いたげに口を開いたが、ルルーシュは先を言わせなかった。
指先でゆっくりと唇をなぞる。それだけで、ライは驚いたように口をつぐみ、それから困惑したように眉をさげた。
ようやく「らしく」なってきた表情にルルーシュは安堵する。
「今のおまえは、愛しい人を守り失った王でもあり、無知ゆえに孤独を取り戻そうとした愚か者でもある」
「――ひどい言い草だ」
「事実だろう?どちらでもある今のお前は、確かに『ライ』という存在だ。重なって成長したお前だよ」
その恐怖は、怯えは、嘆きは消えないかもしれないけれど。
「現在のお前は過去のお前ではない。そして、俺にはお前がついている。大丈夫。全部うまくいく」
「――本当か?」
「本当だ。俺はお前には嘘をつかないよ」
ライは楽しそうに笑った。
「嘘つきめ」
それからしばらく肩を震わせ笑った後に、やさしく微笑んだ。
それこそ、ルルーシュのライの微笑みだった。
「ありがとう」
「ああ」
「もう少し眠ったほうがいいかな?」
「そうしろ。今度起きたときはちゃんと起きていろよ、ライ」
「うん、そうだな。きっともう、『私』は必要ないから」
――君がいる限り。
幸福のありか
(その場所を失わずに済んだことに、君がいてくれたことに、感謝する)
********************
「王様.verライとルルーシュの会話」というリクエストでした。
……王様、か?(激しい自問)
違う気がする。(後悔の自答)
という内容になってしまいましたが、龍劉様に捧げます。
うーん、なんでうまくいかないのでしょう?
としばらく悩んでみたのですが、たぶんウチのライ君は「自分の大切な人の前」ではできるだけ残酷な面(王様.ver)を出さないようにするような気がするのですよ。
だからいっそ、学園編ラストのようにテロリスト相手とかならよかったかもと、反省しています。
実は、龍劉様からのリクを聞いた時点で3パターンを考えたんですよ。
「頭ぶつけて王様まで記憶が後退するライ(もちろんギャグ)」
「銀行強盗にあったライ(サウンドエピソード6内の「三つめの理由」のパロ)」
と、今回の話です。
たぶん話を書く前にブラックリベリオンを見直して、最後のルルとスザクを見てしまったからこんな話になったのだと思います。
あの時、ルルーシュが急に怒ったように見えるんですよね。
ということは、スザクがルルーシュの地雷を踏んだということで……その前の会話はというと、要するに「自分を否定」されたことがルルの地雷だったような……?
という訳のわからないことを考え――
え?結果がこう?みたいな。orz
本当にすみません!
返却可ですから!なんなら別.verとかでも書き直しますから!
あんな素敵なお話いただいたのに、こんな駄文で本当に申し訳ないですっ!。・゚・(ノД`)・゚・。